六年一組、本紛失事件
「何かね?」

 おばあさんは不審そうな顔で子吉沢を見つめた。

「あの、古田君いますか?」

「古田君? うちの息子は会社だよ」

「会社? あ、敏哉くんですけど……」

「はあ?」

 おばあさんは目を閉じ、両手は耳を塞ぎ聞くのを拒否しているようだ。

「敏哉君、いますか!」

 子吉沢は大きな声をおばあさんに向けて言った。

「そんな人はいません」

 おばあさんはあっさりと言った。
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