六年一組、本紛失事件
「何でもないです」

 波教頭は高基教諭の耳をつかみ、音楽室から引っ張り出した。それは耳がちぎれるのではないかというほどだ。

 高基教諭は痛がっても音楽室を出るまでは離さなかった。

「あれほど言っただろう!」

 波教頭は顔を真っ赤にして怒りを噴き出した。誰もいない廊下に響いていた。

「そうですが……」

 高基教諭は藤美教諭と抱き合ってい言い訳など言葉にでなかった。こんなに早く、波教頭が現れるとも予想していなかったのだ。ただエロじじいと頭に浮かんだが言ってしまえば話が険悪になるのでやめた。

 波教頭は高基教諭の頬を平手で一発叩いた。二人の姿は滑稽である。

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