六年一組、本紛失事件

　子吉沢と高蔵を中心に他の生徒たちは丸く囲むように状況を見守っている。

　誰も止める者はいない。

「最近、気に食わねえぞ！」

　高蔵は顎をしゃくりあげ、自信満々である。

「気に食わないのはお互い様だ！」

「俺に喧嘩で勝てると思うか？」

「さあな。やってみないとわからん！」

「ははん……」

　高蔵は鼻で笑っている。余裕があるようだ。

「このやろう！」

　子吉沢は高蔵が余裕を見せているうちに、先制のパンチを左の頬に一発入れた。

　高蔵は予想していなかったので、いきなりのパンチにひるんで、後ろに倒れた。