六年一組、本紛失事件
 静まり返った教室に現れたのは校長だった。

「今日は高基先生がお休みなので、授業は私がやります」

 影の薄い校長は生徒たちからしてもいないのに等しい。

 誰一人、生徒に元気がない。

 子吉沢はアリスが心配だった。欠席かそれとも遅刻してくるかは定かではない。遅刻にしては遅すぎるし、昨日、涙を見せて、それ以来登校しないのは不安だ。特に明るくて、美人なのでいるだけも違うのに、こんな日はいてほしかった。

 校長はどんどんと授業を進めて行く。しかし、誰も身が入っていない。

 活気がなかった。

 給食も終わり、休み時間になったときにアリスが登校してきた。
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