六年一組、本紛失事件
「すごい!」

 華子は拍手をした。つられて周りにいた生徒たちも拍手した。敵対している慶子とひとみはそっぽを向き、苦虫を潰したような表情をしていた。

「それでなんだけど……転校することになったの……」

「ええっ!」

 生徒たちは驚きの声を上げた。慶子とひとみは笑顔に変わっていた。

 黙って聞いていた子吉沢は血にのけが引いたようだ。顔は真っ青になり、立っていられなくなったので、その場にしゃがみこんだ。ショックだった。

「あのね、急に決まったの!」

 アリスはピシャリと言った。だが、どこかさみしそうに目をウルウルし、涙を堪えているようだった。
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