六年一組、本紛失事件
「準主役のチャンスをもらったんだから、しかたないよ」

「ありがとう、塙さん、そしてみんな……」

 教室内にすすり泣きが響いた。

 子吉沢は立てなかった。アリスと急な別れで、何をしていいのかわからなかった。

「アリス、漫画本はあげるよ」

 新田の目も涙でいっぱいだった。

「ありがとう」

「でも、今日でお別れなんてさみしいよね。せめて、お別れ会ぐらいしたいよね」

 華子はあふれる涙で言った。

「そうだね。私も、もう少しみんなといたいよ」

 ここで、慶子とひとみは教室の外に出て行った。後を追うように美紀子も出て行った。
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