六年一組、本紛失事件
 高蔵は教室の角で一人突っ立ていた。

 子吉沢はアリスに話したいが、もうチャンスはない。こんな人の多いところで、告白もできない。

「それじゃ、帰るよ」

 アリスは言った。

「もう、帰るの?」

 華子は涙が止まらなかった。

「うん、仕事があるからね」

 アリスは教室を出て行った。みんなもアリスを囲むようについて行った。

 教室には子吉沢と高蔵と理々だけが残った。





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