六年一組、本紛失事件
 女子は玲で決まりだ。

「男子で掲示委員をやりたい人はいませんか?」

 と、美紀子は言ったが男子は誰も手を上げなかった。教室内は森閑としていた。

「はい!」

 威勢よく声を出したのは、木村啓太郎だった。

 木村はこの雰囲気をよんで手を上げたのである。高基教諭に良いイメージを与えるには絶好のチャンスと思ったからだ。それに掲示委員の仕事は楽だからっていうのもあった。

「やっと、手があがったな。この調子で、学級委員に推薦されるのではなく、積極的に委員をみんなやろうな。小学生最後の年ぐらいやらなくて、どうする?」

 木村の思惑通り、高基教諭には好印象だ。

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