六年一組、本紛失事件

「まだ、掃除当番は決めてないから今日はみんなでやってくれたまえ。学級委員の二人がみんなの指示をしてくれ」

　と、高基教諭は言って、生徒たちの不満を避けるように、帰りのあいさつを終え。そそくさと教室を退室した。

　机が一斉に動き出した。生徒たちは掃除のために教室の後ろに集めたのだ。

　教室の前半分は空きスペースがあるので、男子たちはすぐにじゃれ合うように、プロレスごっこをはじめた。

「ほうきが六本しかないので……」

　と、美紀子が言うが誰も聞いてないようだ。男子たちはさらに暴れだしてきたようだ。

「コウモリ君！」

　小森も一緒になってプロレスごっこをやっているので、美紀子に代わって慶子が言った。