六年一組、本紛失事件
「ひどい! 古田君、美紀ちゃん泣かせて最低!」

 と、ひとみはいかにも古田が悪いように言った。

「いや、そんなつもりじゃ……」

 古田も大弱りである。

「あんたね! いつもつまらないことばかり言って、どういうつもりよ!」

「すいません」

 古田はひとみに向かって頭を下げた。

「私に謝ったって意味ないでしょ!」

「林さんを泣かせようとしたわけじゃないんだよ。ただ、笑わせようとしただけなんだよ……」

 と、古田は言うが美紀子は泣きやまなかった。
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