六年一組、本紛失事件
「あんたバカね! また、言わなくていいこと言って」

 ひとみは古田を侮蔑するように目を細め、舌打ちをした。

「ちょっと! さっきから聞いていたけど、ちょっと変だよ」

 と、黙って静観していた馬屋が口をはさんできた。

「何が?」

 ひとみは首を右横に曲げた。

「古田君がちゃんと謝っているじゃないか!」

「どこが?」

「手をついて土下座までしてるんだぞ!」

「それが?」

「それがって! 男が謝っているのに!」
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