六年一組、本紛失事件
「読むよ。『渋革ひとみさま いつもあなたのことを見ていました。そう、あなたが入学したころからです。小学一年生のころから見てはいましたが、そのころからとてもかわいかったのですが、特別な感情があったわけではありません。日々、いろいろな生徒を見ていましたが、特別な感情はありません。去年、つまり五年生くらいから、渋革ひとみさんを見て気持ちの変化をおぼえました。毎朝、あなたを見ていると、気持ちが楽しくなるのです。ここ一年ずっと見ていました。あまりじっと見てあなたに気づかれるのを恐れていました。自分との年齢差を考えても無理なような気がしたからです。でも、何もしないまま、ずっとすごすのも嫌になってきたので、手紙を書きました。ぼくの気持ちは渋革ひとみさんのことが好きです。大好きです。この世で一番好きです。本当は付き合いたい気持ちでいっぱいですけど、無理なのはわかっているので、せめてじっと見ていても怖がらないでください。それだけで充分なので。お願いします。では、また会ったときはよろしくおねがします。 田脳次郎より』だって!」
と、ひとみは読みあげた。
と、ひとみは読みあげた。