六年一組、本紛失事件
「で、誰なんだ?」

 高蔵は気になった。美人でもないひとみに好意を感じるのが不思議だったのだ。

「誰でもいいでしょ」

 ひとみはしゃべりたくないようだ。

「用務員のおじさんよ」

 お節介な美紀子が言った。やはりこの場の雰囲気を読めないようだ。

「用務員っていうと……もしかして、田脳とか言うおじさんか?」

「そうよ」

 美紀子は誇らしげに言った。

「美紀ちゃん、もう、言わなくてもいいよ!」

 ひとみは田脳からもらったラブレターが嫌だったのだろう。机に顔をつけて両手を後頭部に押さえている。
< 66 / 302 >

この作品をシェア

pagetop