六年一組、本紛失事件
「だって、まだ、本を持ってきてもないのに、盗まれるとか、わけがわからないじゃない」

「細かいことはお前らに言っても理解できないんだ。とにかく何か起こってからでは遅いんだよ。だから、未然に防ぐにはこれくらいしかできないんだよ」

「理々君、細かいことを言ってよ。それで納得させてよ」

「渋革さんよ。個人的なことだから、理解しなくてもいいよ。それよりラブレターもらったことがかなりイラついているのか?」

 理々のこの一言でひとみは口をとがらせて黙った。これで話は終わりかと思われた。

「先生! ひどいんです」

 と、美紀子がひとみに変わり口走った。

「どうした?」

 高基教諭は苦虫を噛み潰したように、美紀子を見たのである。
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