六年一組、本紛失事件
「撮ったよ」

 アリスはあっさりと言った。

「そうなんだ。どんなところで撮影したの?」

「今回の撮影は田舎とかが多かったかな。無人の駅とか」

「何線ですか?」

 と、またしても子吉沢とアリスの間に入ってきたのは荒屋だった。鉄道好きな荒屋にしてみれば、話題に入ってきて当然である。

「えーと、何線だったかな……」

 アリスは困り顔であった。人気者は次々と男子の質問責めだ。

「じゃあ、場所は?」

 荒屋としてはアリスと話すチャンスを得たので、逃したくはなかった。アリスの心中などまったく考えていないのだ。
< 95 / 302 >

この作品をシェア

pagetop