六年一組、本紛失事件
「ツトム!」

 高蔵は教室を出たところで、笈滝を呼んだ。

「何でしょう?」

 笈滝は先に行かず、教室の外で高蔵を待っていたようだ。

「今日の先生どうかな?」

「はぁ」

 笈滝は鈍いので、高蔵の質問が理解できない。口を開けて、首も右に傾けている。

「藤美先生だよ」

「そりゃ、とってもきれいな先生です」

「ブラが見えそうで、見えないんだよな。何とか見えるようにしろ!」

「そんなこと言われても、困ります」

 笈滝の目は真っ赤になっていた。
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