あなたの指先で酔わせて。
「秋月さん、こっち」
カウンターに座っている、少しウェーブした髪の毛の男が私を呼んだ。
ありがとう、と、少し微笑みかけながら近寄ると、バーテンダーらしき男の人が椅子を引いて待ってくれていた。
もう一度、ありがとう、と、椅子を引いてくれた彼に微笑んだ。
きっと今日は、頬の筋肉を沢山使う日になるだろう。
……隣の、ウェーブの名前は知らない。
きっと、二度と会うこともないと思う。
だって、ほんの数時間前に、ネットで知り合った男だから。