あなたの指先で酔わせて。
都会で最大級と言われる繁華街から、ほんの数本入った路地のバーをウェーブ男は指定してきた。
ほんと自慢じゃないけど、私は、凄い方向音痴。
こんな街中じゃ、多分…いや、絶対迷子になる。
店なんかみつかんないって、半泣きになりながら探していた。
私の名前は、秋月芽衣。
昼間は、WEBデザイナーをしている。
…だけど、週末はちょっと特殊な仕事をしているんだ。
会社にも、親にも内緒なんだけど。
…
……――
………――――
…もう、無理。
絶対、無理。絶対見つかんない。
約束の時間を、もう過ぎてしまっているのに。
ごめんなさい、道に迷いましたってメールをしようとした時、薄暗い路地にひとつの看板が、ひっそりと光りを放っているのをみつけた。
[Bar Malt]
ウェーブ男が指定してきた店だ。