あなたの指先で酔わせて。
「お待たせしてしまって、すみません。」


相も変わらず、括約筋をフル活用しながら答えた。



「大丈夫、大丈夫。この店ちょっと入り組んでて解りづらいんだよ。」


肘をカウンターに預け、グラスを片手にニヒルに笑いかける。

…多分、この男は、この姿が格好と思っているに違いない。


……残念ながら、私には1ミリも響かないんだけど。



もう一度、すみませんと張り付いたままの笑顔を少し曇らせて謝った。




「いいよ、いいよ。そんなにあやまらないで。
 ところで、秋月さん、何飲む?」


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