あなたの指先で酔わせて。
「ありがとうございます。
…おまたせしました。ギムレットです」
男と話を続けているうちに、いつの間にかシェークし終わっていたらしく。
華奢なカクテルグラスに注がれた、霞色のギムレットがコースターに置かれていた。
「だって、コバ。僕もコバの動きは綺麗だと思うよ」
聞かれていたんだ。
恥ずかしい。
そう思いながら、バーテンダーを見上げた。
”コバ”と呼ばれたそのバーテンダーは、もう一度、ありがとうございますと答え、ちょっと恥ずかしそうに微笑んだ。
ほんの少し長めの黒髪に、白いワイシャツと黒いベスト。
とても綺麗な顔をした男の人だった。