彼と私の関係〜もう1つの物語〜
手に入れたい全て
帰りの車中はお互い無言だった。
彼は普段していない眼鏡をかけて前を見ている。
流れる景色をボンヤリ見ながらも、全神経が右手へ集中している。
その手は彼の左手と繋がっていて。
時々ギュッと握られると、これは夢じゃないと。
ホントに彼と手を繋いでいるんだと分かる。
――『奈央が好きだ』
浜辺で聞いた彼の台詞。
今になってジワジワと胸を熱く焦がしていく。
彼はホントに私の事を?
私を気遣ってくれただけ?
グルグルといろんな考えが頭を駆け巡る。
この無言の静寂が……
ただ……
怖かった……