彼と私の関係〜もう1つの物語〜
家の鍵を開けて靴を脱ぎ、彼を中へ招き入れる。
1DKの小さな私の部屋。
あまり物を置くのが好きではなかったから、必要最小限のものしか詰め込まれていない。
部屋の明かりを付けようとスイッチに手を伸ばすと
その手が強引に引っ張られる。
彼の胸へと倒れ込んだ私は、なぜか冷静だった。
「ごめん、奈央……」
きつく抱きしめられ、彼の震えが伝わってくる。
――彼は迷っている。
このまま私と流れてしまってもいいのかと。
なぜ……
――彼の考えている事が分かるんだろう?