彼と私の関係〜もう1つの物語〜
「……この事……奈央の妊娠を彼は知ってるのか?」
兄の素直な問いかけに私は首を横へ振った。
「ち、違うの!」
勢いよく立ちあがろうとする兄を懸命に押しとどめる。
「言えないの……だから彼は気付いてないの」
彼は悪くない……
何度も何度も兄に言い続けて。
兄は拳を握りしめたまま俯いていた。
どれくらいの時間、兄妹が沈黙していたのだろうか。
「……どうするんだ?」
兄の質問に私は迷わず答えた。
「産めない。堕ろすしか……ないの」
愛しい拓海との子供。
だけど、私には産む権利がない。
本音は産みたい。
拓海の子供を産んで育てたい。
だけど……