彼と私の関係〜もう1つの物語〜
兄の目の前で同意書へ署名する。
中絶の同意書には相手の署名も必要で。
「俺が書くから」
そう言うと、同意書を私の手から奪いサラサラと記入する。
書かれた名前は兄の親友の名前。
「アイツは何も言わずに名前を貸してくれた」
病院からの帰りに文房具店で買った三文判を捺印する。
「俺から明日、奈央の会社に連絡するから」
「ごめん……」
兄は私の為に嘘を重ねてくれる。
そんな兄に私は謝ることしかできなくて。
小さい頃からしてくれたように、今も私の頭を撫でてくれている。
「たった2人の兄弟だから」
お前の為なら何だってできるんだよと言いながら……