彼と私の関係〜もう1つの物語〜
虚言
兄とともに再び病院を訪れたのは、その日の夕方。
今度は兄も一緒に診察室の椅子に座り、医師から話を聞いていた。
「まだ初期の中絶なので麻酔が切れたら帰っていただいて大丈夫です」
――手術が明日の昼からに決まった。
兄も明日は半休を取って付き添う事を医師に告げていた。
注意事項の書かれた用紙を手渡され、診察室を後にする。
外に出ると秋なのになぜか纏わりつくような湿気を含む空気。
「雨が降るかもなぁ」
兄が私の言いたい事を言ってくれて。
考えている事は同じだったんだと感じた。