彼と私の関係〜もう1つの物語〜
今、会ってしまうと……
自分の決心が揺らいでしまうから。
お腹に手を当てて力を入れる。
――ママに……
力を下さい……
矛盾した考えだとは思わなかった。
ただ、拓海に縋れないから……
明日、お腹から居なくなる我が子に私は縋ることしかできなかった。
「とりあえず……上がってもらおうか、奈央?」
兄の問いかけにハッと顔を上げると、拓海は心配そうに私を見ている。
門前払いなんてできない……
奥さんとの事がダブったのかもしれないと。
大きな病院で再検査をするという話を聞いて駆けつけてくれたんだと思えた。
―それが拓海の優しさだから。
兄に無言で頷くしかなかった。