彼と私の関係〜もう1つの物語〜
嗚咽が出ないように唇を噛みしめると……
ノックの音がして、静かにドアのスライドした音が聞こえた。
顔を横に向け、枕で零れた涙を拭ったのと同時にベッドの周りにあるカーテンが少し動いた。
「目が覚めたって聞いたから」
「……た、くみ……」
躊躇いがちにカーテンを閉めた彼は、布団の上に置いていた右手を優しく握ってくれて。
「俺には奈央しかいないから」
辛い思いをさせてごめんと右手を唇にあてながら囁いていた。
拓海は私の嘘に気付いていた……
拓海との子供を堕ろした事実を分かっていた。
――分かっていて、付き添ってくれていた。