彼と私の関係〜もう1つの物語〜
隠していた本音
いつものバーで待ち合わせをした。
先に店へ着いた私は、マスターに会釈をするとカウンターの奥に座った。
「飲み物は真央が来てからでいいから」
そう声を掛けて、煙草に火を付けた。
真央からのメールを考えると、きっと拓海との事を聞かれるはず。
噂は真央の耳にも届いたんだと。
洗いざらいをすべて話してしまおうか?
昨日から考えていた。
だけど……
拓海との最初の出会いと中絶の事はどうしても話せないと思ったのはなぜなんだろう?
入社前の話は真央を最初から裏切っていたように思えて。
中絶の事は、自分自身でもまだどこかで引き摺っている事実。