彼と私の関係〜もう1つの物語〜
事務所の階数を通り過ぎたエレベータは『R』にランプを灯した。
チンと音が鳴りドアが開く。
そのまま屋上へ続く階段を5段上がると、ドアノブに手を掛けた。
ドアを開くと室外機の暖かい風が頬を撫でる。
間を突き進むと、高い柵へ到着する。
私の指定席。
背中を預けるように座りこむと、ポケットから携帯灰皿を取り出し煙草に火を付けた。
紫煙が空へあがるのを見ながら、自然と零れる涙をそのままにして心を無にしようと。
拓海との最後の繋がりだと縋っていた会社を退職するまでのカウントダウンがすでに始まっている。
――何もかも失うことへの喪失感。