彼と私の関係〜もう1つの物語〜
カコーンと音を鳴らしながら動くそれをどれくらい見ていたのだろうか。
「失礼します」という声に肩をビクッと揺らすと、仲居さんがお酒を運んできた。
お酌を受けて、料理が運ばれてくる。
「大事な話があるから」
この部屋に入って初めて言葉を発したのは社長だった。
女将さんは笑顔で頷くと静かに部屋を去って行った。
「岡本さん」
社長の呼びかけに顔を上げる。
「藤井との事は、直接聞いてたんだ」
私はびっくりして思わず拓海へ視線を移した。
「奈央との事は本気で考えてたから」
静かに微笑む拓海はゆっくりとした動作で御猪口を口へ運ぶ。