彼と私の関係〜もう1つの物語〜
彼は無言で机の横に置いていた鞄から書類を取り出す。
思わず俯いて彼の顔を見られない私にいつもと変わらない口調で
「これ、岩井さんから」
そう言って手渡された用紙を見て、私の目を見開くことしかできなかった。
――これって……
「向こうの会社にもうちの問い合わせがあったらしくて、リストを作ってくれてたんだ。明日からアポ取って、一緒に回ろうな」
それはプレゼンでうちの会社を知ってくれた新しい顧客の一覧で
「この会社が得意先になったら、すごい事かもしれないな」
――真央の言った通りだ……
彼は結果に落胆した顔ではなく、次に繋がる仕事を掴んだ私に穏やかな笑顔を見せてくれていた。