プリマへの扉
「でも…私大丈夫です。明日からも練習行くし。」


「マリ…さっきお医者さんから聞いた。あなたはバレエしばらく休んだ方がいいって…」



「…………。」



「マリ…私の責任だっていうのは承知の上だけど、今回は諦めるしかない…」



「やだ!!!」



「マリ……。」
都先生は今までに無いくらい悲しい顔をしていた。



「…やだよ………。」



「また…留学する機会はあるから…。」

嘘だ…。この小さい地方のバレエ教室で留学出来る機会なんてそうそうない。



「先生…それでも…」
涙が止まらなかった。




「マリ、自分の手を見て。」


手?


あ……………。



私の手には歯の跡がついてひどく内出血していた。



これは自分で夕飯の後無理矢理トイレで吐こうとしたときの跡だ。



「私ね…マリがやせ細っていって、その手の跡を見て私のしたこと…拒食症なのにマリを放っておいたことにはっきり気づいたの…だからあの日お母様を呼んだの。」




「はい…。」



「よく…考えてみて…。」


そう泣きながら言って先生は帰っていった。
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