アオゾラ<上>
始まり





季節は春。




辺りは桜吹雪が舞っていてみんなうっとりと眺めながら歩いている。


まだ少し冷たい風が俺の顔を突き刺していく。



4月とはいえどまだ肌寒い。


乱れたマフラーを直して、俺の口から小さな溜め息が漏れる。




見慣れた景色に周りには見慣れた制服の生徒達。




目的地までの道のりが短いようで長く、憂鬱に感じながらも川原の近くの土手を足早に歩く。





駅から遠いんだよ、全く。





心の中で愚痴を吐きながらも歩く速度は変わらない。






  「そーう!!」






誰かが俺の名前を呼んだ気がした。


・・・きっと俺の勘違いだろう。






スタートするのはまだ早すぎるだろ?






俺は後ろからかけられた声に聞こえなかったフリをして振り返らずそのまま歩いた。



きっとこう思うだろう。


五十嵐 奏(イガラシ ソウ)ではない他の奴に声をかけてしまったと・・・ね。





「奏ってばー!ぇ・・・奏じゃないの・・・?」





・・・ほーらね?


予想通り過ぎて笑える。






俺は1度足を止めてまた小さく溜め息をつき上を向いて空を見上げた。



・・・ただ何となくだけど。




雲1つ無い透き通った綺麗な空だった。









「空好きなの?」








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