ヤンキー君のお隣に♪<完結>
「それより、先輩…体大丈夫ですか?」
「うん、へーきだよ。きっとただの風邪」
「そうですか…」
「ねぇ、松山君。今日の帰りさ、私たちの前を歩いてた二人、高倉君と奈保ちゃんだったって知ってた?」
「はい」
気づかないふりしてたけど、実は知っていた。
二人が仲良さげに下校していることを。
「なーんだ、知ってたんだ。……ふーん」
「知らないほうがよかったですか?」
「別にそういうわけじゃないけどさ、ねぇ、それみてどう思った?」
どうって…
本音を言うと、見たくなかった。信じたくなかった。
「少し、嫌でした」
「少しどころじゃないでしょ?」
「………まぁ…」
ホントはものすごく嫌だった。
「……私はさ、羨ましかった。めちゃめちゃ、羨ましかったよ。あんな風に仲良く歩いてさ、高倉君とずっと話してる奈保ちゃん。正直、嫉妬しちゃった」
………先輩…
「…あ…の…」
先輩の目から涙がこぼれ落ちた。
「なんでかな…って…奈保ちゃん…なんで…なんで奈保ちゃんなのかなって……なんで…みんな…奈保ちゃんなのかなって…なんで…私…い、いつも…上手くいかない…の…かなって」
ポロポロと涙をこぼす先輩を見ても俺はハンカチ一つ差し出すことが出来なかった。
「私…初めて…恋して……けっこう…自分なりに頑張って…アピールしてさ…なのにね…なのに…」