あっぷあっぷ

あるできごと

 こんなことがありました


 恥ずかしいのだけど わたくしは


 結婚願望がない


 なのにこう言いました


「もしもわたくしが太ったブタなら
 こう考えたでしょう。
 『ひと』として種の保存は至上の命題です」


 と……


 当然のように言ったのです


 むろん、本音ではありましたが


 わたくしには 子供を産んだことがない


 だから、責められて言い返しました


「あなた、女子に
『あなたは種の保存を心がけていますか』と
 
 尋ねてみては? きっと反感を買うから」と


 申し上げたのですよ


 ああ、気持ちが良かった


 今頃彼はどんな反論を考えているのかと考えると


 おかしくて、おかしくて


 でもね、わたくしだって


 あなたがたのように、父に、そして母に


 この身からうまれた赤児を


 抱いてほしい、と思わなかったことは


 ないのです


 これが、わたくしの内緒でないしょの秘密です





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