短編■ 制服の頃
例えば春。新しいクラスメートへの緊張なんてどんなだったろう。
秋の放課後、夕暮れの中友達と肉まん片手に二人乗りをしたり、
冬の寒い日に体育をさぼってカイロを貸してと喚いたり、
保健室にはヤンキーな先輩が居るから気持ち化粧を薄くしたり、
その時の普通が、今になれば最高に懐かしくて切なくて――…
泣きたくなるのは何故。
女子高生をしていた頃に流行った歌を今 聞くと、当時の教室の雰囲気が鮮明に蘇る。
戻れないからこそ、何故か泣きたくなる。
香水の香りや、流行ったファッション、ヘアスタイル…
―――懐かしいだけ。
プリクラを眺めると、ますます戻りたくなるばかりだ。
戻れないから美化するのだろうか。
今の現状に不満はないのに、未来に戸惑いはないのに、
あの頃に戻りたくて堪らない。
あの頃に戻れるなら…貯金を全部手放せるくらいに。
失恋した時よりも昔を思うと懐かし過ぎて苦しくて―――