短編■ 制服の頃
不思議なことだと思う。
なぜなら、女子高生の頃の自分は、今の“大人”と呼ばれる頃に憧れていた。
あんな風になりたいと女子大生を眺めたり、あんな風になりたいと店員さんを眺めたり、
友達と理想の未来設計をしていたと言うのに。
卒業したら一人暮らしをするとか、二十四歳で結婚するからそれまでに旅行しようとか、
三十歳になるとマイホームを建てるから遊びに来てくれとか、
―――ネタ重視に未来を語るのは楽しかった。
それが今、友達と会うと、将来の年金がどうとか、今後のローンがどうとか、
数年後の貯金がどうとか、切実な部分の未来を語るようになり…
それから逃げたいから、
――昔の『あの頃は良かった』話をやたらするようになった。
女子高生の頃の懐かしい話ばかりして笑うようになった。
なぜか未来に笑えなくなった。
いつからか境に、未来より過去に夢見るようになった。
戻れないから綺麗なのだろうか。