ねぇ、ロミオ?
祈ります
「…幽霊、みたい」
そっと夜中に私の寝室に入りこんではベッドに潜り込もうとしていた彼は、そのまま固まった。
くす、くす、くす。
何ともくすぐったい気持ちが込み上げてきて私は横になったまま腰をくの字に曲げて丸くする。
「…恋人に対して、それは酷くない?」
「だって、本当にそう思ったから」
いつだって突然現れて、突然いなくなってしまう。彼は、そういう人だ。
「僕は、確かに此処にいるんだよ」
「今は、ね」
「あらあら…」
彼の女性のような綺麗な手が、私の頬に触れた。
もう、夏の夜。
それなのに、彼の手はひんやりと冷たくて、気持ちいい。まるで冬の夜みたいな人だと思う。
「僕がいないと寂しい?」
彼は何でも器用にこなしてみせる人。
けれど、時たまこんな風に瞳を酷く揺らして寂しく笑う時がある。まるで、自分を必要とする人間などいないと決めつけているような…。
彼の心は、置いていかれたような冬みたい。私が凍りついた心を溶かしてあげたいのに私じゃできそうにもない。
「必要だよ、私には」
だから、ここにいて欲しい。
それとも、あなたは平気なの?
このままずっと一人のまま、その凍りついた心に苦しめられながら最後には死んでいくの?
…一人で?
「ここにいてよ、私のロミオ」
目を閉じて、私を包む体温を感じた。
結局のところ、あなたが幸せならどちらでも構わないのだけど。
ああ、神様。
感謝します。
今日も、彼を、私の傍にいさせてくださって、ありがとうございます。
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