御主人様のメイド



それからあたしが高校2年生になったとき。

また事件が起きた。



それはあたしが友達と遊びに行く約束をしていて、出かけようとしていた。

二階から降り、リビングの扉を開けたときだった。



『グツグツグツ…』


鍋が煮込んでいる音が聞こえた。



「お母さん。友達と遊びに行って来るねー」


…しかし鍋の音だけしか聞こえて来ない。

あたしはお母さんの様子がおかしいと思い、キッチンに恐る恐る行った。



「お母さん…!」


お母さんは…倒れていた。

あのときの記憶が蘇る。

…嫌だ。

もう誰も失いたくない…。


あたしはお母さんの元へ駆け寄り、何度も呼び掛けた。

しかし返事は返って来なかった。


どうして…?

どうしてあたしだけこんな不幸にならなきゃいけないの…?

どうして皆あたしからいなくなるの…?


あたしの頬を冷たいものが伝った。

絶望的だった…。

体が震え、頭が真っ白になった。

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