涙の枯れる頃
「…美姫」
健のか細い声。
こんな声をさせたのも、全部私。
「……美姫さん。さっきはごめんなさい。
……傷ついたわよね?
あたし、ただ見せてしまって…」
看護師は近づいてくる。
「……来ないでよ。
あたしに近づかないでよ…」
勝手に声が震えてくる。
後ずさりをした。
けど、スグに転んだ。
まだ、足がちゃんと動かない。
「…すみません。行くぞ」
無理やり抱き上げられ、病室に戻った。
抵抗した。
…抵抗したけど、効果ない。
結局、戻りたくない病室まで来てしまった。
「…明日、点滴打ちなおしましょうね。
今日はゆっくり休んで下さい。
…美姫さんの付き添いの方、説明しますので…どうぞ」