涙の枯れる頃
「…美姫、逃げんなよ」
みんな、看護師に連れて行かれた。
…はっ。
何でこんな所に来た?
部屋を出、屋上に向かった。
屋上は、予想以上に寒かった。
広い屋上の真ん中に、寝転がった。
馬鹿だ…あたし。
もう、誰も傷つかせたくない。
もう、誰も酷い目に会わせたくない。
もう、みんなの笑顔を失いたくない。
――だから。
だから、放れようとしたのに。
あたしと関わらなければ、誰も傷つかない。
そう思って、離れたのに。
どうして?
どうして?
「……馬鹿じゃない…の…」
目から、枯れたはずの涙が、
再び、流れ落ちた。