涙の枯れる頃



私はゆっくりと、ピアノの音に引き寄せられる様に、男に近づいた

男は私に気付くと、手を止めた

「…やっぱり、大きいね。大丈夫?…おいで」
男は私に優しく手を、差し伸べた
まるで何かに操られてる様に、男の胸に飛びこんだ

「……温かい」
「ハハッ……ごめんね? 長い間。とっても、寒かったよね?」
男は私の頭をゆっくりと、タオルで拭いてくれた
……髪を拭く手から、タオルを挟んで優しさが伝わってくる
「…ありがと」
「…気にすんなって!!」

私は、男の優しい笑顔に連られて笑った

……久しぶりに、笑ったかな。
本当に…笑ってなかったからな。

……1人で、泣いてばっかりだったから。
1人で泣いても、心は…


心の中にある、大きな闇は…
全く…いや。
更に、膨らんで行くばかりで…


私の毎日が、闇色に…染まって行ったんだ



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