涙の枯れる頃
放課後の屋上
―――キイィィイ
サビて、濁ってる扉の音が、
誰もいない屋上に響く。
そして、心地良い風が、
あたしの長い髪をなびく。
ここは落ち着く。
あたしの雄一のお気に入りの場所だ。
ここにいる時だけ、
本当の自分でいられるんだ。
眩しく光っている夕日を、
何も考えずに眺めた。
―――あたしは山辺 美姫 高1
ヤマベ ミキ
黒く長い髪に黒い目。
いたって普通の子…のつもり。
だけど、
あたしの家庭は、普通の家庭じゃない。
お父さんは、投資家。
お母さん…いや、あの人の事は知らない。