涙の枯れる頃


「ぇ!!!ねえっ!!!!聞いてる?」
…あ。

「ごめん」
「…美姫の意地悪」
…最悪。雪が怒ってる。
雪の事ほっとくなんて、超馬鹿。

「…雪、ごめん」
…ごめん、雪。
次から、こんな事しない。

…だから。
だから。私から、離れて行かないで…。

「美っ姫♪チューして?
そしたら、許してあげるっ♪」

……。
……?
「……え」
これが、しばらくして、やっと口から出た言葉だった

「チューしてよっ♪」
その言葉を理解するのに、あまり時間は掛からなかった
目の前で、自分の口に人差し指を当てて、可愛く微笑む雪。

段々、頭に血が上って行くのが分かった。
まるで、長時間温泉に入ったかのように。

「キャハッ!!!真っ赤っかぁ♪
もしかして、チューした事無かったり!!?」

…雪は、冗談で言ったつもりだろうけど。

私はキスだってした事無いし、
健吾以外の男と、抱き合ったのも、
さっき…雪が初めてだ。

だから。

キスなんて、出来ない。
やり方さえ、知らない。

知ってるのは、“キス”と言う言葉だけ。



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