涙の枯れる頃
龍輝黒雷

風邪



「…大丈夫か?」
少し眉を下げて、私の目を真っ直ぐ見てくる男。
……紅色の目から、真剣な眼差しが降ってくる。
「…うん。
…でも頭がボ――っとして…」
「ん。熱あるもんな」
「…熱、あるんだ……。ね、ねぇ。此処…」
「俺んち」

そっか…。
でも何でこの人のお家に?

それも、
「みんなは?」
「帰った」

はぁ…。
じゃあ、私とこの人だけなんだ。

それにしても…
「…部屋、綺麗だね」
「そうか? 微妙だけど」
黒と白で、統一されてる部屋。
余計な物は、置かれて無く、とてもシンプルな部屋。

これで微妙って…。
…何か、凄すぎる。

「…今日は泊って行け。
もう夜遅いし。……親は大丈夫か?」

…親。
「…うん、全然」
私は作り笑顔を浮かべた

「…けど、泊って行って…いいの?」
「…ああ。部屋はいくらでもある」
「ありがと」
…良かった。
今は、1人になりたく無かったんだ。

「…名前、なんて言うの?」
「……日向」
   ヒュウガ
「日向、よろしくね。
私の事は美姫でいいから」
日向は口角を上げて、私の頭の傷口を避けて、優しく撫でてくれた

「…お腹すいたか?」
そっか…
今、何時だろう。
さっきまであった夕日が、今はもう沈み、月が空を支配してる。
「…少しね」


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