涙の枯れる頃


ち、違っ!!!
日向達も、驚いてる。

「あら。違うの?失礼いたしました。
……では、楽しい散歩を!」
看護師は微笑んで、病室を出て行った

…何と言う、能天気な看護師さん。

「んまあ、行こうか」
私は拓真に微笑んで、車イスを押しだした

「美姫。何かあったら連絡しろよ?」
「何言ってんの?
病院は携帯NGでしょー?」
私は健に微笑んでから、病室を出た

……私がみんなにお願いしたんだ。
2人っきりで、散歩がしたいって…。


「中庭に行こうか!!
沢山の花が咲いてるんだって!!」
拓真に微笑んで、エレベーターに乗った

――――チンっ

私は拓真を乗せた車イスを押して、中庭にやってきた。

「うわ~!!!とっても綺麗だね~!!
拓真の好きなコスモスの花、あるかな?」
私は辺りを見渡すと、コスモスの花が沢山咲いてる所があった

「あったよ!拓真!!行こうかっ!!」
私は車イスを押して、コスモスの花の所に行った
そこに、丁度ベンチがあって、隣に車イスを止めた
私は拓真の隣に座って、コスモスの花の匂いに包まれてた

「…拓真。コスモスの匂い、分かる?
……とても、いい匂いだね。
私ね、早く拓真と話したいな…。
拓真の声、聞きたいし、拓真の笑顔もみたい」

私は拓真を見た
拓真は目を閉じて、安らかな顔をしてる

「……拓真」
私は拓真の顔にかかった髪を、ゆっくり耳にかけた


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