涙の枯れる頃
拓真の意識が無くても、日向達が髪を切ってあげたそうで、そこまで長くない。
「…拓真、みんなが待ってるよ。
早く、戻ってきなよ…。ね?」
私は拓真に微笑んだ
「おねぇちゃん!!」
「え…?」
目の前に、小さな男の子が立っていた
「どうしたの?」
「おねぇちゃんの彼ち?」
きっと、“彼氏?”と言いたかったのだろう
「ううん。違うよ」
「そうなんだ!!」
「うん。目を覚まさないんだ…」
すると、男の子は笑った
「僕が、助けてあげようか?」
「え…?」
男の子は可愛く笑って、拓真の手を握った
「僕ね、人のケガを治せるんだ!!」
「え…?」
ケガを…治せる?
男の子は、拓真の手を取り、目を閉じた
しばらくすると、男の子が目を開けた
「もう大丈夫だよ!!
お兄ちゃん、すぐ目を開けるよ!!」
「え…?」
私は拓真を見た
拓真はまだ目を閉じてる
「おねぇちゃんも!!」
「え…?」
「手、貸して?」
私は男の子に手を差し出した
男の子は私の手を握った
その瞬間、物凄く不思議な力が手から伝わって行くのを感じた
気のせいかもしれない。