涙の枯れる頃


私は、日向の胸に埋まる形になった


日向の胸からもテンポ良く、鼓動の音がして…。日向に包まれてると、物凄く安心出来る。そして、暖かくて、甘い香りに眠気が襲ってきた。

重い瞼を開けて、日向を見上げると、優しく口角を上げて、頭を大きな手で撫でてくれた。

「…ひゅ……が?」
「ん?」
優しく、低い声。

「……おや…すみ」
「…おやすみ」
不器用に微笑む姿に、心が揺らされる。
……まるで、揺りかごの中に入ってて、とても大事にされてる子供みたい。

……そうだったら、いいのに。

でも、すぐに日向の顔を見て、幸せな気持ちは吹き飛ばされた



何でかは、分からない。


けど、ケド―――――

日向の頬に――――

綺麗な光が伝わってたんだ。




何で…?
何で君は…泣いてるの?

この時、私は――――…

君を…見とく事しか……


――――出来なかったんだ。



< 85 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop