涙の枯れる頃


日向は、あの女と……愛し合っていたんだよね。

……体も重ねて、愛し合っていたんだね。


…そんなの。
一生知らなくて、良かった。
知って、得もしないのに……。

もう、心がドロドロだよ…。

「…うぅ゛……っ…」
どんどんと、溢れてくる涙が、直人の服を濡らしていく。

直人に迷惑なハズなのに…直人は優しく大きな手で、私の頭を撫でてくれた。

でも、今更離れられ無い。

女の言葉が頭をよぎり、体が硬直してる。

……辛いよ。
心がどんどんと崩れて行きそう。

「…美姫、何があった?」
言いたく無い。
言いたく無いよ――…。

私は黙って頭を振った

…日向がいるのに、日向の元彼を見た……何て言ったら、日向は追いかける?

日向は、私を置いて、あの女の所に行く?

……イヤだよぉ

私、酷いよね?

だけど、だけど。
行って欲しくないの。

お願いだから…
 何処にも行かないで……


此処にいて――――――


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