ここへ・・・
 あの娘は言ったの。

「どうやって本を読んでるの?」って。私は言った。

「あなたがユーフォニュアム(楽器)を奏でるのと同じよ」って。

 ……同じなんかじゃなかった。

 その娘は「一芸大学を目指す」と言って、早朝、星を見ながら朝練し、帰りも一番最後まで残ってた。

『私はそんなふうに本を読んでいなかったのに』

 ただの好奇心の赴くがまま、楽しんでただけなのに。



 その頃、私には己の愚かしさに泣くことさえできなかった。
 
 ……愚かな私を信じた、懸命で心優しいひとだった。

 ああ、もう、二度と彼女の演奏を聴くことはできないのだ……

 ごめんね。

 ごめんね。

 コンクール前に抜けたりしてごめんね。

 全国へ共にゆけなくてごめん。

 優勝飾れば、どんな一芸大学だって、大手を振って迎えてくれたのに……

 私には私にしかわからない、理由があったんだ……

 ケチで話さなかったんじゃないよ。

 話せなかったんだ……

 なにかあると、すぐに先生に相談するあなたには特に。

 ごめんね。

 ごめんね。
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